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物見は単なる礼儀動作ではない
「礼に始まり礼に終わる」と言われるように、礼儀作法が武道の腕そのものを上達させるわけではなくとも、日本武道の世界では、礼儀というものが大切にされてきました。
弓道においては、時に「物見」が礼儀動作のように扱われることがあります。
物見とは、弓構えに含まれる動作のひとつで、取り懸けや手の内を整えたあとに的を見据える動作のことを指します。
確かに初心者から見れば、物見は的中率に直接関係のある動作には到底見えないことでしょう。
しかし物見が、礼儀の意味しか持たない動作だというのは大きな勘違いです。
ハッキリ言えば、
- 物見は弓道の的中率をかなり大きく左右しうる重要な動作
なのです。
ところが弓道歴が数年を越えている中級者層のなかにも、物見が正しくできていない方を散見します。
明らかに物見が浅すぎたり、物見を行った瞬間に体勢がズレていたりと、物見の失敗は意外と周囲から見て分かるものなのです。
アナタがもしも弓構えを完璧にしたいと考えたなら、「自分は正しく物見を行えているかどうか」という点を真剣に考えてみたほうがよいでしょう。
物見がもたらす本当の効果とは
物見は、その字が表すように的を「見る」という動作です。
いたってシンプルな動作に見えますが、実際にはかなり重要な役割を担っていることを理解しておきましょう。
実は物見において
- 重要なのは「顔を向ける」
という点にあります。
物見を疎かにしている方は「目で見る」ことを重要視していることがありますが、
- 目はむしろ半眼にしておく
のが好ましいのです。
もちろん半眼とは、目を半分だけ開けるということではなく、
- 的だけに焦点を絞らず全体像を見極めるように力を抜いて見る
という意味です。
目だけで的を見ようとすると、首の角度が浅くなってしまいます。
自分では気づきにくいかもしれませんが、目に頼ろうとすると首がしっかりと的の向きに回転しないのです。
首をちゃんと回転させ、顔を的の方向に向けるということは、すなわち「正しい姿勢を作る」という効果を持つのです。
物見は単に的を確認するだけの動作だと思われがちですが、むしろその後の
- 射法八節を正しい姿勢で行うための準備動作
だと考えるべきです。
物見が上手くいかないと、慢性的に姿勢が崩れて変な射癖がつきかねません。
例えば首の回転が浅いと引き分けがしにくくなりますので、矢がしっかりと飛ばなくなってしまいます。
また、無理な力を加えて物見を行うと首が傾きやすいため、放った矢があらぬ方向に飛んだり胴造りが崩れることもあります。
物見が浅い人はどうすれば良い?
物見を失敗する原因はいくつかあります。
- 首が傾いている人
- 勢いよく首を回している人
- 的を凝視してしまっている人
失敗の原因は様々ですが、なかでも多いと言われているのが
- 「物見の角度が浅い」という原因
を持つ方です。
弓道では、体を的に対してほぼ垂直に向ける必要があります。
つまり、的に向かって矢を放つためには、顔をほぼ真横に向けなければならないということです。
首を真横に向けるためには
- 「顎を引く」というのがひとつのポイント
になります。
物見が浅い弓士にありがちな特徴なのですが、首を真横に向けようとしているのに、顎を上向きにしてしまっている方がいます。
人間の構造上、顎が上がっていると首の可動域が狭まってしまうので、結果的に物見が浅くなってしまうのです。
顎をしっかりと引いてから物見を行うと、顎を上げた状態よりも遥かにスムーズに首が回ることに気が付くはずです。
それでもまだ物見が浅いという方は、単に首の可動域が狭いということです。
日頃から首のストレッチを行い、首の可動域を広げる努力を行いましょう。
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